臨床心理士の専門業務

臨床心理士に求められている4つの専門業務をご紹介します。

臨床心理士の専門業務は、「臨床心理士とは」で概説した4種があげられます。これらは、「臨床心理士資格審査規程」第11条に“臨床心理士に求められる固有な専門業務”として記されています。その主旨を要約すると以下の通りです。

①臨床心理査定

「診断」(diagnosis)ではなく「査定」(assessment)と表記しています。「診断」は、診断する人の立場から対象の特徴を評価しますが、「査定」は、その査定(診断)される人の立場から、その人の特徴を評価する専門行為に主眼がおかれています。つまり臨床心理査定とは、種々の心理テストや観察面接を通じて、個々人の独自性、個別性の固有な特徴や問題点の所在を明らかにすることを意味します。また同時に、心の問題で悩む人々をどのような方法で援助するのが望ましいか明らかにしようとします。加えて、他の専門家とも検討を行う専門行為といえます。

②臨床心理面接

臨床心理面接は、臨床心理士とクライエント(相談依頼者)との人間関係が構築される過程で“共感”“納得”“理解”“再生”といった心情が生まれる貴重な心的空間です。そして来談する人の特徴に応じて、さまざまな臨床心理学的技法(精神分析、夢分析、遊戯療法、クライエント中心療法、集団心理療法、行動療法、箱庭療法、臨床動作法、家族療法、芸術療法、認知療法、ゲシュタルト療法、イメージ療法など)を用いて、クライエントの心の支援に資する臨床心理士のもっとも中心的な専門行為です。

③臨床心理的地域援助

専門的に特定の個人を対象とするだけでなく、地域住民や学校、職場に所属する人々(コミュニティ)の心の健康や地域住民の被害の支援活動を行うことも臨床心理士の専門性を活かした重要な専門行為です。これらのコンサルテーション活動は、個人のプライバシーを十二分に守りながらも、コミュニティ全体を考慮した心の情報整理や環境調整を行う活動ともいえます。また、一般的な生活環境の健全な発展のために、心理的情報を提供したり提言する活動も“地域援助”の業務に含まれます。

④上記①~③に関する調査・研究

心の問題への援助を行っていくうえで、技術的な手法や知識を確実なものにするために、基礎となる臨床心理的調査や研究活動を実施します。心理臨床の個別性に由来するさまざまな問題や課題に関する特化した研究技法ともいわれる“事例研究”の体験学習は、臨床心理士に求められる大切な専門業務と直結しています。高度専門職業人として、自らの専門資質の維持・発展に資するきわめて重要な自己研鑽に関する専門業務といえましょう。